学校安全
学校安全って何?
学校安全は、児童生徒が安全について必要な事柄を理解し、これらを日常生活に適用し、常に安全な行動ができるようにする安全教育と、児童生徒の学校生活が安全に営まれるように安全に関して必要な条件整備を図るための安全管理からなるものである。
保育所における乳幼児の事故防止対策に関する調査研究報告書より
安全管理について
安全管理の目的
①潜在する危険を早期に発見するとともに事故災害を防止すること。
②安全管理の活動を通して、安全指導の充実を図ること。
③危険箇所を発見し安全確保の措置を講ずること。
関係法令
①学校保健安全法
学校保健法を改正・改称し、H21.4.1より施行。
全文はこちら。
学校保健安全法、学校薬剤師と学校薬剤師会 - 一般社団法人奈良県薬剤師会より
第三章 学校安全
第26条 学校安全に関する学校の設置者の責務
学校の設置者は、児童生徒等の安全の確保を図るため、その設置する学校において、事故、加害行為、災害等により児童生徒等に生ずる危険を防止し、及び事故等により児童生徒等に危険又は危害が現に生じた場合(危険等発生時)において適切に対処することができるよう、当該学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第27条 学校安全計画の策定等
学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。
第28条 学校環境の安全の確保
校長は、当該学校の施設又は設備について、児童生徒等の安全の確保を図る上で支障となる事項があると認めた場合には、遅滞なく、その改善を図るために必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができない時は、当該学校の設置者に対し、その旨を申し出るものとする。
第29条 危険等発生時対処要領の作成等
学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の実情に応じて、危険等発生時において当該学校の職員が取るべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領(危険等発生時対処要領)を作成するものとする。
2 校長は、危険等発生時対処要領の職員に対する周知、訓練の実施その他の危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずるものとする。
3 学校においては、事故等により児童生徒等に危害が生じた場合において、当該児童生徒及び当該事故等により心理的外傷その他の心身の健康に対する影響を受けた児童生徒等その他の関係者の心身の健康を回復させるため、これらの者に対して必要な支援を行うものとする。この場合においては、第10条(地域の医療機関との連携)の規定を準用する。
第30条 地域の関係機関等との連携
学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、児童生徒等の保護者との連携を図るとともに、当該学校が所在する地域の実情に応じて、当該地域を管轄する警察署その他の関係機関、地域の安全を確保するための活動を行う団体その他の関係団体、当該地域の住民その他の関係者との連携を図るよう努めるものとする。
→まとめると
第26条 学校の設置者(≒教育委員会)のすべきこと
①事故、加害行為、災害等により生ずる危険の防止
②危険等発生時の対処
が適切に行われるよう、
学校の施設、設備、管理運営体制の整備充実や必要な措置を講ずること!
第27条 学校安全計画について
①施設、設備の安全点検
②安全に関する指導(通学や日常生活)
③職員の研修
についての計画を策定し実施すること!
第28条 学校環境の安全の確保(校長のすべきこと)
施設や設備に、安全確保に支障のあるときは、
①措置を講じる
②難しいときは教育委員会に報告する
第29条 危険等発生時対処要領について
①危険が発生したときに職員が取るべき措置とその手順を定めた要領を作る
②校長は、要領を周知し、訓練を行う
③心身の健康に支障が出た場合は、病院やカウンセラー等と連携し支援を行う
第30条 地域の関係機関等との連携
①保護者
②警察署など
③地域の安全を確保するための活動を行う団体など
④地域住民など
と連携する!
②学校保健安全法施行規則
全文はこちら。
第28条 安全点検
法第27条の安全点検は、法の法令に基づくものの他、毎学期1回以上、児童生徒等が通常使用する設備及び施設の異常の有無について系統的に行わなければならない。
2 学校においては、必要があるときは、臨時に、安全点検を行うものとする。
第29条 日常における環境の安全
学校においては、前条の安全点検のほか、設備等について日常的な点検を行い、環境の安全を図らなければならない。
→まとめると
①毎学期一回以上
②臨時
③日常
の安全点検を行うというもの。
留意事項
第26条について
「設置する学校において」とは
①校舎、運動場など敷地内
②敷地外で、学校の管理者の管理責任の対象となる活動が行われる場所(農場など実習施設等)
・通学路は地方公共団体の管轄で通常は含まれないが、第27条の通り安全指導や、第30条の通り警察、ボランティア団体等地域との連携に努めるとされているので、学校も適切に対応する。
「加害行為」とは
誰かが故意に児童生徒に危害を加えること
①不審者が侵入
②児童生徒間のいじめや暴力行為
事故、加害行為、災害「等」とは
施設設備からの有害物質の発生など
第27条について
学校安全計画
①毎年作る
②以下を含まなければならない
a. 学校の施設設備の安全点検
→児童生徒の多様な行動に対応したもの
b. 児童生徒等に対する通学を含めた安全指導
→安全管理と一体的に取り組む。
→防犯マップなど
c. 教職員に対する研修
→事故事例集を利用する(文科省やスポ振が作成している)
→警察等とも連携
評価の視点
①学校事故等の緊急事態発生時の対応の状況
②家庭や地域の関係機関、団体との連携の状況
③法定の学校安全計画や、学校防災計画等の作成・実施、体制整備の状況
④危機管理マニュアル等の作成・活用の状況
⑤安全点検(通学路の安全点検を含む)や、教職員・児童生徒の安全対応能力の向上を図るための取り組みの状況
(「学校評価ガイドライン」よりhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/03/16/1368615_009.pdf)
安全教育について
安全教育の目標
①日常生活における事件・事故災害や犯罪被害等の現状、原因及び防止方法について理解を深め、現在及び将来に直面する安全の課題に対して、的確な思考・判断に基づく適切な意思決定や行動選択ができるようにする。
②日常生活の中に潜む様々な危険を予測し、自他の安全に配慮して安全な行動をとるとともに、自ら危険な環境を改善することができるようにする。
③自他の生命を尊重し、安全で安心な社会づくりの重要性を認識して、学校、家庭及び地域社会の安全活動に進んで参加・協力し、貢献できるようにする。
安全教育の各領域の内容
①生活安全に関する内容
日常生活で起こる事故の発生原因、結果と安全確保の方法について理解し、安全に行動ができるようにする。
a. 学校生活や各教科、総合的な学習の時間などの学習時における危険の理解と安全確保
b. 生徒会活動やクラブ活動等における危険の理解と安全確保
c. 運動会、校内競技会等の健康安全・体育的行事における危険の理解と安全確保
d. 遠足・旅行・集団宿泊的行事、勤労生産・奉仕的行事等学校行事における危険の理解と安全確保
e. 始業前や放課後等休憩時間及び清掃活動等における危険の理解と安全確保
f. 登下校や家庭生活における危険の理解と安全確保
g. 野外活動等における危険の理解と安全確保
h. 事故発生時の通報と応急手当
i. 誘拐や傷害などの犯罪に対する適切な行動の仕方など、学校や地域社会での犯罪被害の防止
j. 携帯電話やコンピュータ等の情報ネットワークの活用による犯罪被害の防止と適切な利用の必要性
k. 施設・設備の状態の把握と安全な環境づくり
②交通安全に関する内容
様々な交通場面における危険について理解し、安全な歩行、自転車・二輪車等の利用ができるようにする。
a. 道路の歩行や道路横断時の危険の理解と安全な行動の仕方
b. 踏切での危険の理解と安全な行動の仕方
c. 交通機関利用時の安全な行動の仕方
d. 自転車の点検・整備と正しい乗り方
e. 二輪車の特性の理解と安全な利用
f. 自動車の特性の理解と自動車乗車時の安全な行動の仕方
g. 交通法規の正しい理解と遵守
h. 運転者の義務と責任についての理解
i. 幼児、高齢者、障害のある人、傷病者等の交通安全に対する配慮
j. 安全な交通社会づくりの重要性の理解と積極的な参加・協力
③災害安全に関する内容
様々な災害発生時における危険について理解し、正しい備えと適切な行動が取れるようにする。
a. 火災発生時における危険の理解と安全な行動の仕方
c. 火山活動による災害発生時の危険の理解と安全な行動の仕方
d. 風水(雪)害、落雷等の気象災害発生時における危険の理解と安全な行動の仕方
f. 避難所の役割と避難経路についての理解、避難の仕方
g. 災害に関する情報の活用や災害に対する備えについての理解
h. 地域の防災活動の理解と積極的な参加・協力
i. 災害時における心のケア
心のケア
心のケアの意義
強い恐怖心や衝撃を受けた場合、不安や不眠などのストレス症状は誰にでも起こりうることであり、時間の経過とともに薄らいでいくものであるが、場合によっては長引き、生活に支障をきたすなどして、その後の成長や発達に大きな支障となることもある。そのため、日頃から子供の健康観察を徹底し、情報の共有を図るなどして早期発見に努め、適切な対応と支援を行うことが必要である。
法的根拠
学校保健安全法第29条
3 学校においては、事故等により児童生徒等に危害が生じた場合において、当該児童生徒及び当該事故等により心理的外傷その他の心身の健康に対する影響を受けた児童生徒等その他の関係者の心身の健康を回復させるため、これらの者に対して必要な支援を行うものとする。この場合においては、第10条(地域の医療機関との連携)の規定を準用する。
災害や事件・事故発生時における子どもの心のケアの基本的理解
資料
子どもの心のケアのために ―災害や事件・事故発生時を中心に―:文部科学省
⑴ 災害や事件・事故発生時におけるストレス症状とその対応
子どものストレス症状の特徴
・心の症状だけでなく身体の症状も現れやすい
・情緒不安定、体調不良、睡眠障害などは年齢を問わず見られる。
①幼稚園〜小学校低学年
・腹痛、嘔吐、食欲不振、頭痛などの身体症状
・興奮、混乱などの情緒不安定
・行動上の異変(落ち着きがなくなる、理由なく他の子どもの持ち物を隠す)
・ストレスの引き金となった場面を再現するような遊びをする
②小学校高学年以降
・上記の身体症状
・鬱状態(元気がなくなり引きこもりがちに)
・些細なことで驚く
・夜間に何度も目覚める
急性ストレス障害(ASD: Acute Stress Disorder)
a. 持続的な再体験症状
・体験した出来事を繰り返し思い出し、悪夢を見たりする
・体験した出来事が目の前で起きているかのような生々しい感覚が蘇る(フラッシュバック)等
b. 体験を連想させるものからの回避症状
・体験した出来事と関係酢量な話題などを避けようとする
・体験した出来事を思い出せないなど記憶や意識が障害される(ぼーっとする等)
・人や物事への関心が薄らぎ、周囲と疎遠になる 等
c. 感情や緊張が高まる覚せい亢進症状
・よく眠れない、イライラする、怒りっぽくなる、落ち着かない、集中できない、極端な警戒心を持つ、些細なことや小さな音で驚く 等
このような「再体験症状」「回避症状」「覚せい亢進症状」がストレス体験の4週間以内に現れ、2日以上かつ4週間以内の範囲で症状が持続した場合を「急性ストレス障害(ASD)」と呼ぶ。
「再び回避し覚せい」と覚えましょう。
外傷後ストレス障害(PTSD: Posttraumatic Stress Disorder)
災害や事件・事故後にASDのような強いストレス症状「再体験症状」「回避症状」「覚せい亢進症状」が現れ、それが4週間以上持続した場合は「外傷後ストレス障害(PTSD)」と呼ぶ。これらの症状は、災害や事件・事故からしばらく経ってから出現する場合があることを念頭に置く必要がある。
☆アニバーサリー反応
災害や事件・事故などが契機としてPTSDになった場合、それが発生した月日になると、一旦収まっていた症状が再燃することがある。年単位だけでなく月単位で起こることもある。
⑵基本的な対応方法
①普段と変わらない接し方を基本とし、優しく穏やかな声かけをするなど本人に安心感を与えるようにする。
②ストレス反応は普通であること、症状は必ず和らいでいくことを本人に伝え、一人で悩んだり孤独感を持たずに済むよう、信頼できる人に相談したり、コミュニケーションを取ることを勧める。
③普段となるべく変わりない環境の提供
④学活等で、心のケアに関する保健指導
⑤保護者へのストレス症状に関する知識の提供と情報交換
⑦児童精神科などの受診の勧告
子どもの心のケアの体制づくり
a. 平常時から備えておくべきポイント
①子どもの心のケアが危機管理体制の一環として位置付けられていること
②子どもの心身の健康状態や対応方法を日常的に把握しておくこと
③災害や事件・事故発生時に起こる子どもの心身の健康影響や基本的対応方法について、研修会等により教職員の共通理解を図っておくこと
④保健教育が学校教育計画・学校保健計画に明確に位置付けられていること
⑤日頃から、子どもや保護者との信頼関係を築いておくこと
⑥学校、家庭、地域社会との連携が図られていること
b. 養護教諭の役割のポイント
①子どもの心身の健康問題の解決に向けて中核として校長を助け円滑な対応に努める
②学級担任等と連携した組織的な健康観察、健康相談、保健指導を行う
③子どもの心身の健康状態を日頃から的確に把握し、問題の早期発見・早期対応に努める
④子どもが相談しやすい保健室の環境づくりに努める
⑤子どもの訴えを受け止め、心身の安定が図れるようにする
⑥常に情報収集に心がけ、問題の背景要因の把握に努める
⑦子どもの個別の支援計画の作成に参画する
⑧学校はどこまで対応できるのかという見立てを明確にする
⑨校内関係者や関係機関等との連携調整等を行う
⑩医学的な情報を教職員等に提供する
11地域の医療機関や相談機関等の情報を提供する