学校保健
学校保健って何?
学校保健とは、学校において、児童生徒等の健康の保持増進を図ること、集団教育としての学校教育活動に必要な健康や安全への配慮を行うこと、自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力を育成することなど学校における保健管理と保健教育である。
(文部科学省HPより)
つまり、学校保健=保健管理+保健教育 ということです。
文部科学省資料 健康教育(学校保健・学校給食)より
学校保健計画
学校保健を行なっていくにあたっては、その計画を策定しなければなりません。
学校保健計画は、学校における児童生徒、教職員の保健に関する事項の具体的な実施計画であるが、この計画は、学校における保健管理と保健教育との調整にも留意するとともに、保健体育、学校給食など関連する分野との関係も考慮して策定することがたいせつである。また、この計画を適正に策定し、それを組織的かつ効率的に実施するためには学校における健康の問題を研究協議し、それを推進するための学校保健委員会の設置を促進し、その運営の強化を図ることが必要である。
(S47 保健体育審議会答申)
学校においては、児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため、
①児童生徒等及び職員の健康診断(学校保健安全法第13〜16条)
②環境衛生検査(第6条)
③児童生徒等に対する指導(第9条)
その他保健に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。
(学校保健安全法第5条)
学校保健安全法と合わせて、「けんか指導、いい債務ロック」と覚えましょう。
留意事項
①毎年作ろう!
学校保健計画は、学校において必要とされる保健に関する具体的な実施計画であり、毎年度、学校の状況や前年度の学校保健の取り組み状況等を踏まえ、作成されるべきものであること。
②上の3項目は必ず入れよう!
健康診断・環境衛生検査・児童生徒等に対する指導の3点です。
③保護者等の関係者に周知しよう!
学校保健に関する取組を進めるにあたっては、学校のみならず、保護者や関係機関・関係団体等と連携協力を図っていくことが重要であることから、学校教育法等において学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとされていることも踏まえ、学校保健計画の内容については原則として、保護者等の関係者に周知を図ることとすること。
大分県教育委員会さんが、学校保健計画の例を、Excelファイルで上げてくれています。学校保健計画の作成 - 体育保健課:大分県教育委員会
作成の手順
①学校保健計画目標の決定
②原案の作成
③原案についての意見聴取(学校医・学校歯科医・学校薬剤師)
④全教職員による協議と共通理解
⑤学校保健委員会での協議
⑥学校長による決定
目標を作ったらそれを元に原案を作り、学校医等から意見を頂き、全教職員、学校保健委員会と回し、学校長に決定してもらうという流れです。
学校保健委員会って?
学校保健委員会は、学校における健康問題について、「研究協議し、それを実践に向けて推進すること」を目的とした委員会活動のこと。多様化する学校保健の諸課題に対処するために、単なる審議の機関ではなく、学校における健康に関する課題を研究協議し、学校での健康づくりを推進するための重要な組織である。
なぜ設置するの?
学校保健活動の内容は、極めて多方面に渡り、多くの人々の協力を得ながら展開される活動である。そのため、それに携わっている人々の共通理解を図り、共通の目的に向かって、有機的な連携による組織的な活動が必要となってくる。
→保健教育、保健管理、組織活動と本当に様々なことを行う学校保健という分野。学校、保護者、地域、専門機関とたくさんの機関が、同じ方向を向いて活動するために必要だということです。
学校保健委員会の歴史
①S.24(1949)
文部省より、「中等学校保健計画実施要領(試案)」が出され、設置が推奨されるように。校長の諮問機関として出発。
協議事項は、学校保健計画の立案と実施に関することを中心に、児童生徒の健康の保持増進に関係のあるすべての分野の代表によって組織され、決定事項から実行される。
②S.33(1958)
文部省体育局長通達「学校保健法及び同法施行令等の施行にともなう実施基準について」において、学校保健委員会の開催・活動の計画的実施についての通達がなされる。
「法の運営をより効果的にさせるための諸活動例えば学校保健委員会の開催およびその活動の計画なども(学校保健計画の中に)含むものであって、年間計画および月刊計画を立ててこれを実施すべきものである」
つまり、学校保健委員会の開催や活動は、学校保健計画に盛り込むべきもの!ということです。
③S.47(1972)
文部省保健体育審議会答申において、「(学校保健計画は)この計画を策定し、それを組織的かつ効率的に実施するためには、学校における健康の問題を研究協議し、それを推進するための学校保健委員会の設置を促進し、その運営の強化を図ることが必要である」と指摘。
④H.9(1997)
文部省保健体育審議会答申において、現代的な健康課題の解決に向けて、学校保健委員会を活性化し、家庭や地域社会との連携を強化することが求められた。特に学校における健康教育推進のために、学校及び地域学校保健委員会の活性化を提言。
「地域」というキーワードが強調されます。
⑤H.20(2008)
文部科学省中央教育審議会答申「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策として」において、学校保健委員会を通じて、学校内の保健活動の中心として機能するだけでなく、学校、家庭、地域の関係機関などの連携による効果的な学校保健活動を展開することが可能となることから、その活性化を図っていくことが必要とされた。
わかりやすいように、各年での提言をまとめます。
①S24 「学校保健委員会を設置しよう!」
②S33 「法の運営を効果的にしよう。法の下に作られる学校保健計画の中で、学校保健委員会の開催・活動の計画もなされ、実施されるべき!」
③S47 「学校における健康問題を研究協議し、児童生徒の心身の健康つくりを推進しよう。そのためには学校保健委員会の設置を推進し、運営を強化しなくては!」
④H9 「学校で健康教育を推進しよう。学校における健康問題を研究協議する学校保健委員会は運営を強化しなくては。家庭・地域社会の教育力もあげたいので、学校と家庭・地域社会を結ぶ機関としても機能させよう。地域学校保健委員会も大事!」
⑤H20 「学校保健委員会の設置率は8割程度。設置を進めるとともに、学校、家庭、地域社会の連携を推進し、活性化させよう!」
学校保健委員会を設置することは法的に定められているわけではありません。ですが、上記のような通達等で設置が推奨されています。
運営上の留意点
①学校と家庭の役割を明確にする。
・学校保健委員会で話し合われた内容は、家庭に保健だよりや学校だよりで確実に伝える。
②実践の手立てがイメージできる議題にする。
・テーマに即し、わかりやすい資料を提供し、協議の焦点を絞る。
③問題解決に効果的に働く組織と運営に配慮する。
・始めと終わりの時間を明確にし、能率よく進行する。
・学校医、学校歯科医、学校薬剤師は、専門的立場から指導・助言する。
④委員会で協議された事項は、実践に移すようにする。
学校保健委員会には誰がいるの?
学校によって様々ですが、以下に例を提示します。議題によって構成員は変わります。また以下は考えられる全てであり、一般的にはここまで大人数ではありません。
①学校教職員
校長、教頭、教務主任、保健主事、養護教諭、保健体育・安全・給食等の主任、一般教職員、栄養教諭・学校栄養職員等
②医療関係者
学校医、学校歯科医、学校薬剤師
③保護者
PTA役員、通学区域代表等
④地域保健関係者
保健所その他地域の保健関係機関等の代表等
⑤児童生徒の代表
⑥地域の交通安全・防災関係機関の代表
☆保健主事とは
保健主事は、学校保健と学校全体の活動に関する調整や学校保健計画の作成、学校保健に関する組織活動の推進(学校保健委員会の運営)など学校保健に関する事項の管理にあたる職員であり、その果たすべき役割はますます大きくなっている。
このことから、保健主事は充て職であるが、学校における保健に関する活動の調整にあたる教員として、すべての教職員が学校保健活動に関心を持ち、それぞれの役割を円滑に遂行できるように指導・助言することが期待できる教員の配置を行うことやその職務に必要な資質の向上が求められている。
(H20.1 中央教育審議会答申)
法的根拠は以下の通りです。
学校教育法施行規則(S22)
第45条 小学校においては、保健主事を置くものとする。
2 前項の規定にかかわらず、第四項に規定する保健主事の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他の特別の事情のあるときは、保健主事をおかないことができる。
3 保健主事は、指導教諭、教諭または養護教諭をもって、これに充てる。
4 保健主事は、校長の監督を受け、小学校における保健に関する事項の管理に当たる。
※中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校等にもそれぞれ準用
→つまり保健主事とは、校長の監督のもと、学校保健の管理と調整を行う役のことです。
学校保健委員会では何を協議するの?
①学校保健計画に関する事項
②定期健康診断の実施及び結果の事後措置に関する事項
③保護者の啓発と養育態度等の変容を促す事項
「けいけん保護者養育」と覚えます。
具体的に言うと…
健康づくり、歯科保健、食生活、性教育、環境、心の教育、安全教育など
議題設定のポイント
①児童生徒の生涯の健康つくりの基礎を培う観点から、現在の自校の健康問題を解決し、健康つくりを考える議題とする。
②健康診断の結果から、経年推移や地域的な比較をし、議題を焦点化する。
③健康に関する実態調査や追跡調査の実施から、具体的な問題を取り上げる。
学校の危機管理に関する学校保健委員会の役割
①学校保健計画の策定と確認
②防災体制と保健管理との調整
③健康診断の結果の事後措置の状況の把握(生活管理が必要な児童生徒など)
④研修会の開催等
年度はじめには、生活管理が必要な児童生徒の周知や、職員に向けてのBLS講習、エピペン講習が行われることも多いです。
学校保健委員会における、養護教諭の役割は?
①協議内容に即した資料を提供する。
(例)
・健康診断結果と事後措置
・体力テスト結果
・保健室来室状況
・疾病の罹患状況
・傷害の受傷状況
・健康観察・健康相談の結果
・日常の執務からの資料提供(児童生徒の生活時間、食生活のアンケートなど)など
・保健室登校の状況
②議事内容の決定・運営に当たる保健主事の職務に、専門的立場から協力する。
③学校保健組織活動が円滑に推進できるよう、関係者との連携を図る。
④協議内容についての報告や実際的助言を行う。など
養護教諭が保健主事を兼務する場合も多いです。
どう評価する?
学校保健の評価ー保健管理の評価項目・指標の視点(例)
①児童生徒を対象とする保健(薬物乱用防止、心のケア等を含む)に関する体制整備や指導・相談の実施の状況
②家庭や地域の保健・医療機関等との連携の状況
③法定の学校保健計画の作成・実施の状況、学校環境衛生の管理状況
④日常の健康観察や、疾病予防、児童生徒の自己健康管理能力向上のための取組、健康診断の実施の状況
こうしたことを基に、評価していきます。
練習問題
学校保健委員会について
①設置する理由を述べよ。
②実施の目的を述べよ。
③協議内容を答えよ。
④議題を設定する際のポイントを挙げよ。
⑤委員会の開催により、具体的にどのような成果が期待できるか。
⑥学校保健委員会における養護教諭の役割を挙げよ。
こたえ
①
学校保健活動の内容が極めて多方面にわたり、多くの人々の協力を得ながら展開される活動であるから。
②
・学校における保健に関する課題解決や児童生徒等の健康つくりのための研究協議を行う。
・児童生徒の自主性・実践力を高め、保護者の保健意識、地域の健康に対する認識を深める。
・学校保健活動の水しん。
・校内協力体制の整備を図る。
③
・学校保健計画に関する事項
・定期健康診断の実施及び結果の事後措置に関する事項
・保護者の啓発と養育態度等の変容を促す事項
④
・実践の手立てがイメージできるものにする。
・実情に即したものにする。
・参加者が興味を持つ議題を選定する。
・自校の課題を探り、できるだけ具体的な課題に絞る。
⑤
・定期健康診断の適切な事後措置の徹底
・食事、運動、休養及び睡眠など規則正しい生活習慣作り
・感染症の予防・対策についての取り組み
・災害時の避難や対策等について、家庭、地域社会の理解と協力
・交通安全や生活安全など地域社会等と協力した環境づくりの推進
・水・空気など健康で安全な環境づくりと管理の徹底
・いじめや不登校の問題など心の健康問題への取り組みの充実。
⑥
・協議内容に即した資料を提供する。
・議事内容の決定・運営にあたる保健主事の職務に、専門的立場から協力する。
・学校保健組織活動が円滑に推進できるよう、関係者との連携を図る。
・協議内容についての報告や実際的助言を行う。